
ドイツ1部ブンデスリーガのヴェルダー・ブレーメンに所属する大迫勇也選手。
鹿児島県南さつま市出身で3歳からサッカーを始め、2009年に高校卒業後に6クラブの争奪戦の末、鹿島アントラーズに入団。
2014年にドイツのTSV1860ミュンヘンに移籍し、以来ブンデスリーガの3チームでプレーしてきています。
2013年から日本代表にも選ばれ、FIFAワールドカップにも2014年ブラジル大会と2018年ロシア大会に出場しています。
2018年ロシア大会では日本代表初戦のコロンビア戦ではヘディングで見事勝ち越しゴールを決め日本のベスト16入りに大きく貢献しました。
大迫勇也選手と言えば、高校3年のときに出場した第87回全国高校サッカー選手権で「大迫半端ないって!!」の名言(?)でも知られ、今では大迫選手のキャッチフレーズになっています。
そんな大迫選手の高校時代の半端ない活躍ぶりと記録について調べてみました。
【大会前からマークされるほどの大迫の活躍】
2018年の第87回全国高校サッカー選手権に3年生で鹿児島城西高校のエースとして出場し大迫選手は初戦から対戦相手の徹底的にマークを受けながらも、10得点10アシストの活躍を見せ鹿児島城西高校の準優勝に大きく貢献しました。
大会得点王にも輝き、1大会で10得点はそれまで個人最多得点記録9得点を塗り替える新記録を作りました。
この本大会での活躍で大迫選手の名前は広く知れ渡りましたが、実は大会前から相手チームからかなり警戒される程の活躍を見せていました。
2006年に鹿児島城西高校に進学しサッカー部に入部、1年生の頃からレギュラーで活躍し、またU-16日本代表にも選出されました。
2年生の時にはJFAプリンスリーグU-18九州1部で得点ランキング5位の成績を残しています。
そして、3年生で出場した第61回鹿児島県高校総体サッカー競技大会の決勝で強豪校の鹿児島実業高校を相手に一人で5ゴールを挙げる活躍で見事優勝しました。
更に、その年のJFAプリンスリーグU-18九州1部で10得点(8試合)をマークし、得点ランキング1位に輝くとともにチームのリーグ優勝に大きく貢献しました。
また、その年の秋に行われた高校サッカー選手権鹿児島県大会では5試合に出場し11得点を挙げる大活躍でチームの県大会優勝と全国大会出場を達成しました。
しかも、この結果で部史上初の新人戦、高校総体、選手権の鹿児島県大会3冠を達成しました。
どの大会でも大迫選手は得点を奪う活躍を見せ、選手権全国大会では注目選手の筆頭でした。
大迫選手がこんなにも活躍するようになったきっかけは、高校2年生のときにFIFA U-17 ワールドカップの代表候補に選ばれながら、最終選考で落選した経験があったからだそうです。
大迫選手の才能や実力はすでにずば抜けて高かったが、フォワードに一番大事なゴールに対する意欲が足りないと当時の鹿児島城西高校サッカー部の小久保監督は気付きました。
そして、小久保監督は大迫選手にゴールに対する意欲を習得させるために大迫選手に常にゴールという結果を求めました。
大迫選手自身も当時「毎試合2ゴールを決める」と課題を自分に課し、この結果を追い求めることでプレースタイルの変化やゴールに対する意欲が身につき、大型高校生ストライカーに成長したと言われています。
【大迫だけじゃない!鹿児島城西はチーム全体が超攻撃的】
2008年第87回全国高校サッカー選手権に出場した大迫勇也選手擁する鹿児島城西高校は準優勝の結果を残しました。
この準優勝という輝かしい結果はエースの大迫選手の大会新記録となる10得点の活躍があります。
また、大迫選手だけでなく、当時の鹿児島城西高校は超攻撃的サッカーで知られ、いまだに破られぬ1大会でのチーム最多得点記録を樹立しました。
まず、全国大会予選の全国屈指の激戦区である鹿児島県大会で鹿児島城西高校は準々決勝の鳳凰高校に4対0、準決勝では鹿児島中央高校に5対1、決勝では出水中央高校に4対1と爆発的な攻撃力で8年ぶり2回目の全国大会出場を決めました。
全国の舞台でもその超攻撃的サッカーはいかんなく発揮し、1回戦の青森山田高校に4対3で勝利し、続く大阪桐蔭戦では5対2、3回戦では宇都宮柏陽高校に7対1と大量得点で勝ち上がりを見せます。
準々決勝でも滝川第二高校に6対2、準決勝では前橋育英高校を5対3で撃破し決勝に進出。
決勝では広島皆実高校に2対3で敗れ惜しくも優勝を逃しましたが、6試合で29得点を挙げそれまで帝京高校が持っていた1チーム最多得点記録を塗り替え新記録を樹立しました。
大迫選手は大会史上初となる初戦から4試合連続2ゴールを含む、全試合で得点を記録しました。
この記録は柏レイソルなどでプレーした元日本代表の北嶋秀朗さんが市立船橋の一員として出場した第75回大会以来の快挙で、実は同大会では大迫選手だけでなく、一緒にフォワードとして組んだ3年生の野村章悟選手も成し遂げています。
また、野村選手は大迫選手に次ぐ得点ランキング2位の7得点を記録しています。
このフォワードの二人が鹿児島城西高校の強力な攻撃陣を引っ張っていました。
また、その他にも大迫選手と同級生で「ダブル大迫」で注目された大迫希選手や1年生ながら5試合に途中出場した鮫島晃太選手など卒業後プロサッカー選手として活躍している選手などを擁していました。
当時の攻撃的サッカーを振り返るインタビューで大迫選手は「あまり守備の練習はしなかったかもしれない。
攻撃に重心を置けるのは、フォワードとしては嬉しかったですね。」と語っています。
それほど当時の鹿児島城西高校は超攻撃的サッカーを貫いていたと言えます。
【決勝戦の広島皆実は大会最高の超守備的チーム】
大迫勇也選手擁する超攻撃的サッカーの鹿児島城西高校を決勝で破ったのが、広島県代表の広島皆実でした。
広島皆実は選手権のあった年から「堅守強攻」をチームスタイルに掲げ、その真価を高校サッカー選手権の決勝の舞台で見事に発揮しました。
広島皆実は以前から「堅守」に定評があるチームでした。
優勝した第87回大会の前々回から3年連続で全国大会に出場しており、第85回大会では準々決勝で盛岡商業に0対1で敗れましたが1回戦から3回戦まで失点なしの3試合連続PK戦で勝利し準々決勝へ勝ち上がりを見せました。
前年の第86回大会では準々決勝で津工業高校に1対3で敗れましたがそれまで失点0で勝ち進める高い守備力をこれまで誇ってきました。
優勝した第87回大会の前もその伝統的な守備を武器に広島県大会では6試合で許した失点はわずかに2点。
そして、全国大会では初戦の帝京高校とは両チーム無得でPK戦で勝利、2回戦の徳島商業高校に2対1、3回戦は作陽高校に1対0、準々決勝では四日市中央工業に2対0、準決勝では鹿島学園に1対0と5試合でわずか1失点と堅守で勝ち上がりました。
そして、迎えた鹿児島城西高校との決勝戦では大迫選手のゴールで先制されながら金島選手の同点弾で追いつき、続く谷本選手の逆転ゴールでリード、後半になって追いつかれるも、金島選手の2点目で再び逆転し、終わってみると3対2の打ち合いを制し初優勝を飾りました。
決勝では2失点喫しましたが、大会新記録を塗り替えた超攻撃的な鹿児島城西高校を2失点に抑えたことで広島皆実の堅守ぶりは改めて証明する試合をなりました。
それまで、守備力だけに定評があった広島皆実でしたが、全国大会での準々決勝の壁を打ち破るため「堅守強攻」という「打ち合い」を制すこともできる、攻めて守ってもできるオールラウンダーとなり勝利することができたと当時の藤井監督も語っています。
【準優勝ながら個人・チーム記録ともにいまだ破られない】
鹿児島城西高校は第87回全国高校サッカー選手権に8年ぶり2回目の出場を果たし、準優勝の結果を収めました。
エースの大迫勇也選手を筆頭に超攻撃的なサッカーを繰り広げ、高校サッカーファンのみならず多くの人を魅了しました。
結果こそは準優勝と高校サッカーの頂点まで一歩及びませんでしたが、それ以上に記録を作りそれはいまだに破られていません。
個人記録としては、3年生の大迫選手が10得点を挙げこれは1大会で一人の選手によっては史上初となる二桁得点となりました。
大会得点王に輝くとともに、それまで第78回大会で石黒智久さん(富山第一)と第82回大会で平山相太さん(国見)が持っていた個人得点記録の9得点を塗り替える1大会の個人最多得点記録となりました。
チーム記録としては、鹿児島城西高校は6試合で29得点を挙げ、それまで帝京高校が持っていた1大会での1チームによる最多得点記録を塗り替える新記録を樹立しました。
どちらの記録も高校サッカーにおいて10年以上経った現在でもいまだ破られていない金字塔となっています。
大迫選手は1大会で10得点の大記録を作ったことに、当時あまり意識していなかったみたいです。
元々メラメラと燃えるタイプではないそうで、ゴールに対する意欲とチームの攻撃的サッカーを体現することで成し遂げられた記録だったと考えられます。
またその記録がいまだ破られていないことについて「たくさんの選手がいた中での記録なので、それは素直にうれしいです。
でも、早く自分の記録を抜いてほしいなという思いもあります。」とインタビューで語っています。
更に「すごい選手が出てくるのは日本サッカーにとっていいことですから、どんどん抜いていってほしいなと思っています。」とも言っています。
個人の記録に固着せず、より優秀で日本サッカーの発展につながる後輩の誕生を誰よりも心待ちにしているのは大迫選手かもしれません。
大迫選手の高校サッカーでの不滅の記録を振り返ると「大迫半端ないって!!」と思わせることばかりでした。
これからも大迫選手の活躍に期待しながら、高校サッカーで彼の記録を塗り替える選手が現れるのか注目してみましょう。