
イングランド・プレミアリーグのリバプールに所属している南野拓実選手。
Jリーグのセレッソ大阪でプロとしてのキャリアをスタートさせ、プロ3年目で早くも海外挑戦し、オーストリアのザルツブルクでプレーしてきました。
そして、2020年からイングランドの強豪リバプールに加入しました。
日本代表の森保ジャパンでもエースとして期待されている、世界でも今注目を浴びている日本人フォワードの一人です。
南野選手は中学時代からセレッソ大阪U-15に所属し、そのままセレッソ大阪のトップチームに昇格しました。
そのため、中学校や高校のサッカー部に所属していませんでした。
しかし、南野選手は多くのプロサッカー選手を輩出している高校に通っていました。
そんな、南野選手の中学や高校時代の活躍、出身校の興国高校について調べてみました。
南野拓実の中学時代、高校時代の活躍
南野拓実選手は大阪府佐野泉市出身、小学校時代は通っていた熊取市にある幼稚園が母体となっているゼッセル熊取FCに所属していました。
そして、2007年に中学校に上がる際にJリーグの複数のクラブからオファーを受け、最終的にセレッソ大阪U-15に入団しました。
入学した佐野泉市立第三中学校ではサッカー部に入部せずサッカーを続けました。
そして、2009年に行われた第24回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)では得点王に輝き、チームもベスト8まで勝ち進みました。
当時、南野選手の自宅からセレッソ大阪の南津守グラウンドまで距離があったが、南野選手はその距離に甘んじずに練習に励みました。
当時のチームメートで現在セレッソ大阪に所属する秋山大地選手は南野選手のことを「正直、セレッソに来たばかりの頃の拓実は小さくて、そこまでうまいとは思わなかったですね。ただ、勝気な部分がすごかった。そこは他の選手とは比べ物にならないほどでした。もともとFW気質が強いのか、『絶対俺が決める』とボールをチームメートにもパスしなかったですね。」と振り返り、南野選手は中学生時代からフォワードとしてゴールへの貪欲さがあったと語っています。
2010年に高校進学と同時にセレッソ大阪U-18に昇格をします。
その年のプリンスリーグ関西1部第1節の神戸科学技術高校戦でいきなりハットトリックを決め、チームの勝利に貢献します。
そして、南野選手の活躍もありチームは負けなしでリーグを優勝しました。
その後も南野選手は、2011年プレミアリーグウエストで9得点を決め、得点ランキング4位に入るほか、第19回Jリーグユース選手権大会では8試合で13得点を挙げ得点力で得点王に輝きます。
高校最後の年はプレミアリーグウエストで得点ランキング2位の16得点を挙げる活躍を見せ、高校生ながらトップチームの試合に出場しJリーグの公式戦初出場を果たしています。
南野選手は中学時代からフォワードに必要なゴールへの貪欲さがあり、高校時代はその才能が開花をさせています。
興國高校サッカー部はセレッソ大阪U-18出身が多く在籍
南野拓実選手は興国高校に通いながらセレッソ大阪U-18に所属していました。
当時、南野選手だけでなく秋山大地選手なども同じくセレッソ大阪U-18に所属しながら、興国高校に通っていました。
このように、興国高校にはセレッソ大阪U-18出身の選手が多数います。
Jリーグのクラブチームと提携している高校は全国に多数あり、興国高校は2003年頃からサッカー部の強化を打ち出し、近隣のJリーグクラブであるセレッソ大阪と提携しています。
毎年セレッソ大阪からコーチを派遣してもらい、部員は本格的なプロの指導を受けることができ、練習試合を通してサッカー部の強化につながっています。
興国高校サッカー部にはセレッソ大阪の下部チームから高校に進学して、サッカー部に入部する部員も多くいます。
そのため、興国高校サッカー部はJリーグの下部組織で技術を身に着けてきた優秀な選手をサッカー部に入部させることができます。
そして、それが部の強化につながっています。
また、興国高校ではJリーグ のクラブに内定した選手の内定発表会をセレッソ大阪U-18からトップチームに昇格した選手と合同で行うこともあります。
南野選手や秋山大選手の他にも、ロンドン五輪に出場した浦和レッズの杉本健勇選手もセレッソ大阪U-18に所属で興国高校出身の選手の一人です。
興國高校サッカー部員の進路はJ2狙い?その理由は
興国高校サッカー部はこれまで多くのプロ選手を輩出してきています。
そして、その多くの選手がJリーグ2部のJ2に進んでいます。
プロサッカー選手を夢見る高校生であれば、ほとんどの選手が代表クラスの先輩や練習環境や活動環境が整っているJ1クラブに進むことを願うことが考えられます。
しかし、興国高校サッカー部員はJ2のクラブを進路に狙っています。
そのことについて興国高校サッカー部の内野智章監督は「僕らは、J2狙いなんですよ、プロって。選手の将来を考えて試合に出ることを優先したら、J1よりJ2の方が良い。そこまで突き抜けて上手くなくても、強みになる特長があれば、J2クラブは、魅力を感じてくれます。だから、最初からJ2クラブ向けに発信している部分もあります。」と語っています。
興国高校サッカー部員がJ2クラブに進むのは、試合に出ることを大事に考えているからです。
才能ある選手でもJ1のクラブに入団して出場機会を与えられず、プロ生活2年、3年で辞めてしまう選手も多くいるとのことです。
そのため、内野監督は選手たちがプロになっても試合に出場する機会を作り、成長することができる環境がJ2にあり、それがプロ選手としての成長につながると考えています。
現在、J1のヴィッセル神戸でプレーし日本代表にも選出された興国高校サッカー部出身の古橋享梧選手の活躍が興国高校のJ2狙いのきっかけになったと言われています。
古橋選手は興国高校を卒業後、中央大学に進学。
2017年にJ2のFC岐阜に入団。
プロ1年目の開幕戦から全試合スタメン出場を果たし、2018年8月にヴィッセル神戸に完全移籍。
2019年には元スペイン代表のイニエスタ選手とビジャ選手、元ドイツ代表のポドルスキ選手らとチームの前線に入り31試合出場10得点の活躍を見せ、11月のベネズエラ戦で日本代表デビューも飾りました。
内野監督は以前に興国高校サッカー部からプロに進んだ選手について「スーパーだと思っていた選手が3年程度でプロ生活を辞めてしまうような事例が出てきて、おかしいなと思ったのが、最初のきっかけです。その後、古橋が岐阜(J2)でブレイクしたときに『高卒プロはダメ』なのではなく、21歳くらいまでは、公式戦をプレーする経験がすごく大事なのだろうと感じました。また、古橋が神戸(J1)でも活躍したので、確信に変わりました。結局、試合に出ることが大事。何人もの選手をプロに送り込んで分かったことです。」とインタビューで語っています。
古橋選手は高校時代にはチーム内の5番手くらいの選手だったそうです。
1番手や2番手の選手は早々にプロに進み、古橋選手は大学に進学し、FC岐阜に内定が決まったのも大学4年の12月だったとのことです。
しかし、その古橋選手の躍進で監督の考えが変わったと言っています。
また、J2のクラブのスカウトも優秀な選手の獲得を熱望し、熱心に口説いていた選手が簡単にJ1のクラブのスカウトに取られてしまう悩みを抱えています。J2のクラブのスカウトはどうしても、J1にはかなわないのです。
そして、現在のJリーグは移籍も活発になり、J2のクラブに入団して早くから活躍してJ1のクラブに移籍することも可能となってきました。
そのため、興国高校サッカー部は高卒ルーキーでも早くプロで実戦経験を積むことが可能なJ2のクラブをプロ進路にしています。
強豪ひしめく大阪府で異彩を放つ興國高校
高校サッカーにおいて大阪府は全国屈指の激戦区として知られています。
阪南大学高校や大阪桐蔭高校、東海大仰星高校、履正社高校、大阪学院大高校など多くの強豪校がひしめき合っています。
近年の冬の全国高校サッカー選手権の大阪府代表には毎年異なる高校が出場しており、勢力図は毎年変化する熾烈な争いを見せています。
そんな大阪府で興国高校は2019年第98回大会で全国大会初出場を果たしました。
全国大会出場の経験がないながら、毎年のようにJリーガーを輩出してきた興国高校は個性的とも言えます。
興国高校サッカー部は1965年に創部され、紺地にえんじ色の横縞模様のユニフォームから「関西のバルセロナ」とも呼ばれています。
本家バルセロナと同様にボールを回して主導権を握るポゼッション型のサッカーを展開するのが特長です。
興国高校は男子校ですが、全校生徒2,200人以上が通うマンモス校です。
そして、サッカー部の部員数は200人以上。
選手たちは大阪や近隣の関西圏を中心に全国から優秀な選手が集まります。
内野監督は選手の育成に重点に置き、選手たちは校内の人工芝のグラウンドだけでなく、校外でもトレーニングを行います。
高校のアリーナ施設には、部員たちがトレーニングで使える最新の筋トレマシーンが設置されたアスレチックセンターがあり、プロテインバーも併設されています。
選手用の寮も学校の近くにあり、遠方から来た選手も不自由なく高校に通い、サッカーに打ち込む環境が用意されています。
そして、興国高校の特徴としてセレッソ大阪と提携を組んでいることです。
提携を組んでいることでセレッソ大阪からコーチが派遣され、部員たちは本格的な指導をプロから受けることができます。
毎年プロを輩出している興国高校サッカー部は、強化を続け2019年に全国初出場を勝ち取りました。
しかし、選手権本戦では2回戦で埼玉県の昌平高校に敗れてしまいました。
代表争いが激しい大阪府で再び選手権の出場権を獲得することは容易なことではありません。
ですが、数多くのJリーガーを輩出してきた伝統といまだに強化を続ける、南野拓実選手が卒業した興国高校のサッカー部の今後の活躍と選手の躍進を期待していきたいです。